シンポジウム
【外国語教育・学習のためのコーパス利用 -その可能性-】

Symposium Announcement: “Foreign Language Education: Utilizing Corpus Linguistics Findings”
Friday, March 4, 2011. Room: J307

日時:平成23年3月4日(金) ワークショップ 9:30-11:00/シンポジウム 14:00-17:30
場所:広島大学総合科学部J棟3階 J307号教室
 

主旨:
  今日,コーパス(電子化された大量の言語データ)は,言語研究,辞書編纂,言語習得研究などのさまざまな分野において実証的な研究に必要なデータとツールと方法論を提供しています。 しかし,コーパスは単に研究の手段に留まるだけでなく,外国語教育・学習の分野でも,教材開発に実証的な裏付けを与えたり,自己発見的な学習のツールとして利用できるなどの,新しい可能性を秘めています。 そこで,今回の研究集会では,研究・教育にさまざまな形でコーパスを用いておられる, 井上永幸(広島大学),阪上辰也(名古屋大学),小西廣司(松山大学)の3名の先生方を講師にお招きしました。 井上先生にはコーパスを利用した辞書研究の事例について,阪上先生には外国語教育の場でのコーパスの直接的および間接的な利用方法について,また小西先生にはコーパスを利用した教育実践の個別事例について,それぞれ話していただき,外国語教育・学習の分野でのコーパスの可能性について広く考えてみたいと思います。
  また,シンポジウムに先立ち「An Introduction to Corpus-based Approaches for Language Teachers(外国語教員のためのコーパス入門)」と題したワークショップを行います。(※ワークショップは英語で行います。)

 

「コーパスを活用した英語シノニム語法研究と辞書編集」
井上 永幸(広島大学大学院総合科学研究科 教授)
  発表者はコーパスを活用した英語シノニム語法研究と辞書編集に20年近く携わってきた。 コーパスを活用する利点としては,a. 先行研究にない言語事実についても分析記述が可能となる,b. 母語話者インフォーマント自身の個人差を吸収できる,c. 母語話者の無意識な言語使用を分析の対象とすることができる,d. 母語話者にはない視点での分析を可能にしたり,日本人英語学習者ならではの疑問点に応える文法・語法記述が可能となる,また辞書編集に際しては,e. 水準を規定された共通の言語データに基づいて記述することが可能となる,といったことがあげられる。 本発表では,コーパスをシノニム語法研究や辞書編集に使用する際に,単なる用例集としてではなく分析対象として適切に活用することで,どのような結果を得ることができるのかを,発表者の関わった『ウィズダム英和辞典』(第2版,2007)の記述内容も例に挙げながら, 「コーパス基盤的」(corpus-based)な手法と,「コーパス駆動的」(corpus-driven)な手法に分けて示してゆく。
「言語教育のためのコーパス利用」
阪上 辰也(名古屋大学大学院国際開発研究科 学術研究員)
  本講演では,言語教育のために,コーパスがどのように活用されているのかについて,具体的な活用事例を交えながら紹介します。 コーパスの登場により,母語話者の直感や教師の経験に加えて,より客観的な根拠をもって言語の使用状況を把握できるようになりました。 また,近年,パソコンなどの情報端末が高性能化し,一個人が大規模コーパスを自由に検索・加工できるようになってきています。 こうしたコーパスの利用環境の向上により,言語教育におけるコーパスの利用方法も変化してきています。 そこで,本講演では,コーパスを言語教育の現場で直接的および間接的に利用する方法をそれぞれ説明します。 学生にコーパスを利用させる(直接的利用)ための検索ツールと教室内での活動内容の紹介や,コーパスを利用したWeb教材の利用とその開発技法(間接的利用)についても紹介します。
「コミュニケーション方略概念に基づく語彙研究 -コーパス言語学との関連において-」
小西 廣司(松山大学経済学部 教授)
  語彙教育・学習において,コーパスの果たす役割の重要性は誰しも認めるところである。 一方で,語彙習得の観点から,どのように語彙が選択され,メンタルレキシコン内に蓄積され,再構築されるのかといった点に関しての解答は,従来のコーパス研究では得難く,語彙教育・学習に対し,未だ十分な解答は提供されていないといった批判もある。 今回の発表においては,コミュニケーション方略 (Communication Strategies, CS) を一つの切り口として,従来のコーパス研究を再検討したい。 具体的には,CSを伴う描写表現について,産出された英語語彙を分析し,1) 母語話者のL1語彙としてはどのような語彙が中心語彙であるのか,2) 日本人学習者のL2語彙産出の困難な点は何か,の2点について報告する。 英語母語話者と日本人学習者が産出した英語語彙の比較 (L1 vs. L2) を通して検討し,今後の英語語彙学習の望ましい教授の方向性を探る予定である。

 

スケジュール
Corpus Workshop: An Introduction to Corpus-based Approaches for Language Teachers
ワークショップ:外国語教員のためのコーパス入門
9:30-11:30
09:30Introduction and Overview
あいさつ
Katsumi Iwasaki, Hiroshima University
岩崎 克己(広島大学外国語教育研究センター副センター長)
09:35Using Corpora in Foreign Language Teaching (1) : Corpora in materials development
発表1 「外国語教育におけるコーパス利用事例:教材開発や資料作成におけるコーパス」
Simon Fraser, Hiroshima University
サイモン・フレイザー(広島大学外国語教育研究センター准教授)
10:00Using Corpora in Foreign Language Teaching (2) : Corpora as a learning tool
発表2 「外国語教育におけるコーパス利用事例:学習ツールとしてのコーパス」
Kenneth Fordyce, Hiroshima University
ケネス・フォーダイス(広島大学外国語教育研究センター准教授)
10:20Breaktime
休憩
10:30Workshop on using corpus software: Creating a corpus; making a word list; analyzing a concordance; keyword analysis; collocations and chunks
コーパス検索ソフトを用いたワークショップ:コーパス作成,単語リスト作成,コンコーダンス・ラインの分析,キーワード分析,コロケーションとチャンク
 
シンポジウム 「外国語教育・学習のためのコーパス利用 -その可能性-」14:00-17:30
14:00開会の辞達川 奎三(広島大学外国語教育研究センター長)
14:10講演1 「コーパスを活用した英語シノニム語法研究と辞書編集」井上 永幸(広島大学大学院総合科学研究科教授)
14:55講演2 「言語教育のためのコーパス利用」阪上 辰也(名古屋大学大学院国際開発研究科学術研究員)
15:40講演3 「コミュニケーション方略概念に基づく語彙研究 -コーパス言語学との関連において-」小西 廣司(松山大学経済学部教授)
16:25休憩
16:45質疑応答,全体討論
17:25閉会の辞築道 和明(広島大学外国語教育研究センター副センター長)
17:30閉会

 

<会場へのアクセス>
 JR西条駅から広島大学行きのバスに乗車し,広大西口バス停で下車。
  広島大学東広島キャンパスへのアクセス:
  https://www.hiroshima-u.ac.jp/access/higashihiroshima