シンポジウム
【英語の音声指導-その理論と教室内での実践方法-】

日時:平成26年3月7日(金) 13:30-17:15(12:30受付開始)
場所:広島大学総合科学部 J棟3階 J307号教室
 

主旨:
  近年,情報通信技術(ICT)の進歩と普及に伴い,これを外国語教育に活用する動きが活発になりつつあります。 その中で,パソコンとインターネットによるコンピュータ支援語学学習(CALL)やeラーニングに加え,タブレット端末やスマートフォンなどを教室の内外で駆使した教育実践例も増えています。 これらのテクノロジーは今後の外国語教育の授業スタイルを大きく変えていく可能性を秘めていますが,従来型の授業と組み合わせることにより,指導の効率化や,個々の学習者の能力に応じた学習とその学習の絶対量の向上,授業活動における四技能の統合などが容易に実現できるようになります。
  そこで,本研究集会では,ICTを一斉指導・個別指導・協同学習に活用しておられる,榎田一路(広島大学),神谷健一(大阪工業大学),亘理陽一(静岡大学)の3名の先生方を講師にお招きしました。 榎田先生には広島大学外国語教育センターで開発した外国語学習用オリジナル教材の活用事例を,神谷先生には無償で公開していらっしゃるデータベースソフトを用いた教材管理・教材提示による授業活性化の事例をご紹介いただきます。 また,亘理先生にはPCやタブレット端末,スマートフォンで用いることのできるアプリケーションをご紹介頂きつつ,ICT活用の意義と課題を学習者と教師の両方の目線から考察いただきます。それぞれのご講演から,今後のICTを援用した外国語教育のあり方について広く考えてみたいと思います。

 

「オリジナル英語教材とICTを活用した一斉指導・個別指導・協同学習」
榎田 一路(広島大学 外国語教育研究センター 准教授)
広島大学外国語教育研究センターでは,これまで数多くの外国語学習用オリジナル教材を開発・公開してきた。 これらの多くは自学自習用に開発されたものであるが,開発した教材を単にオンライン等で公開しただけでは,自律学習に結びつかないことは言うまでもない。 ともすれば受け身的な学習になりがちなオンライン教材を,授業と連携させていかに学習活動を活性化させるかが教師の課題だろう。 本発表では,本センターで開発されたオリジナル教材を一斉指導・個別指導・協同学習に活用した事例として,ICTによる受容技能と発表技能の養成という点から2つの実践例を報告する。 まず,2008年より現在までセンターで開発・配信している英語学習用ポッドキャストと、これを用いた授業活動から、ブレンディッド・ラーニング等の実践例を中心に紹介する。 次に、2011年の新カリキュラム導入に合わせて開発された6000語の語彙リストを利用した実践を報告する。 紙媒体の単語集やオンライン教材による学習に加え,学習した単語の使用機会を与え,クラス内の,さらにはクラスを越えた学び合いを目指したICT活用方法を考える。
「データベースソフトウェアを利用した教材管理・教材提示-教材データの多目的な利用と外国語授業の活性化に向けて-」
神谷 健一(大阪工業大学 知的財産学部 専任講師)
外国語授業では様々な4択問題,例文,単語などの教材データが利用され,コンピュータ上で管理されるものも多いが,これらの再利用可能性は必ずしも高いわけではなく,多目的な利用にも適していない場合が大半である。 しかしこれらをデータベースによって一定の形式で管理しておくと,検索機能などを利用した抽出作業が容易になり,蓄積したデータの円滑な再利用が可能になる。 また,データとレイアウトを別々に扱うことができるデータベースソフトウェアの特徴を教材提示に応用する試みは従来ほとんど行われていない。 本発表では発表者自身が開発し http://www.oit.ac.jp/ip/~kamiya/ にて無償で公開しているソフトウェアのうちのいくつかについて,実演操作を行いながら授業の活性化に繋がる応用手法を提案する。
「協同につながるICT,ICTが活きる協同」
亘理 陽一(静岡大学 教育学部 専任講師)
ICTに期待できるのは,大きく言って,学習者の外国語学習を支援する役割と教師の授業準備・運営を支援する役割です。 本発表では,PCやタブレット端末,スマートフォンの具体的なアプリケーションを紹介しながら,この両面における授業でのICT活用の意義と課題を考察します。 その際重視したいのは「協同学習」との関わりです。 「協同(学習)」はこれまで,画一的・個別的・競争的学習への偏りに対する批判を背景に持つ,様々な理論・実践を特徴づける概念として用いられてきました。 近年,その紹介や取り組みを目にする機会は増えましたが,英語教育・学習において「協同(的)」と表現されている関係性の質や,それと具体的な教育内容・方法がどう関連しているのかについての研究は依然として十分とは言えません。 実は,ICT活用による協同学習,あるいは協同学習におけるICT活用は,国際的にはCSCL/CACL (Computer-Supported/-Assisted Collaborative Learning) の文脈で最も盛んに研究が行われきた領域の一つです。 本発表ではその成果を批判的に吟味し,実のある研究・実践の方法を考えます。

 

スケジュール
13:30開会の辞
13:40-14:30講演1「オリジナル英語教材とICTを活用した一斉指導・個別指導・協同学習」榎田 一路
14:30-14:35休憩
14:35-15:25講演2「データベースソフトウェアを利用した教材管理・教材提示
-教材データの多目的な利用と外国語授業の活性化に向けて-」
神谷 健一
15:25-15:30休憩
15:30-16:20講演3「協同につながるICT,ICTが活きる協同」亘理 陽一
16:20-16:25休憩
16:25-17:05質疑応答,全体討論
17:05閉会の辞
17:15閉会

 

<会場へのアクセス>
 JR西条駅から広島大学行きのバスに乗車し,広大西口バス停で下車。
  広島大学東広島キャンパスへのアクセス:
  https://www.hiroshima-u.ac.jp/access/higashihiroshima