シンポジウム
【英語習熟度について考える:語彙・文法・ライティングの視点から】

日時:平成31年3月4日(月) 13:30-17:15(12:30受付開始)
場所:広島大学総合科学部 J棟3階 J307号教室
  

主旨:
  外国語の授業を組み立てるにあたり,必ず考慮に入れなければならないことのひとつとして,学習者の「習熟度」が挙げられます。 小学校での英語教育の導入やオンライン教材の充実を受けて,我々の目の前にいる学生たちが持つ外国語学習の経験は多様化し,その習熟度の幅も拡がってきています。 このような状況のなかで,習熟度の異なる学生たちの言語運用能力を,多角的な観点から検討し,把握することの重要性はますます高まっているのではないでしょうか。
  そこで本シンポジウムでは,複数の視点から英語習熟度についてお話しくださる新進気鋭の英語教育研究者の先生方3名をお招きいたしました。 内田諭先生(九州大学)には語彙の観点から,高橋有加先生(広島大学)には文法の観点から,工藤洋路先生(玉川大学)にはライティングの観点からご講演をいただきます。 それぞれのご講演をもとに,学生の習熟度を踏まえた外国語教育のあり方について深く考えてみたいと思います。

「英語学習者の語彙発達:コーパスから見えてくること」
内田 諭(九州大学言語文化研究院 准教授)
  英語学習者の習熟度レベルが発達すると,語彙レベルも上昇すると考えるのが自然である。 例えば,リーディングの場合,上位の学習者は語彙レベルが高い文章を読みこなすことができるようになる。 一方,ライティングやスピーキングなど発信の場合,リーディングと同様,学習者の習熟度と使用する語彙レベルは比例関係にあるだろうか。
  本発表では,国際的な学習者コーパスであるInternational Corpus Network of Asian Learners of English (ICNALE)を分析対象として,学習者の語彙発達の様子を観察する。 ICNALEは学習者の習熟度別にファイルが構成されており,A2, B1.1, B1.2, B2のデータが含まれている。 語彙の難易度分析の結果,リーディングの英文ではレベルと比例して上昇する語彙難易度指標が,ライティングおよびスピーキングの産出データでは必ずしも直線的に上昇しないことが明らかとなった。 そこで本発表では複数の単語列(ngram, フレーズ)に着目し,レベル別の産出データと比例関係にある品詞列を抽出し,その内実を調査した結果を報告する。 調査の結果,上位学習者の産出データの特徴は,「難しい単語の使用」ではなく,「こなれたフレーズ」の使用であることが示唆された。
「中高生を中心とする日本人英語学習者における関係代名詞の習熟度別使用傾向」
高橋 有加(広島大学外国語教育研究センター 助教)
  近年,日本の英語教育では,外国語運用能力を評価するための国際的な枠組みであるヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)の影響が広がり,学習到達目標の設定や評価への応用も浸透してきている。 CEFRには6つのレベルがあり,これらのレベル別の言語特徴をコーパスデータを用いて抽出する研究がヨーロッパを中心に行われている。 それらの研究では,特定のCEFRレベルを前後のレベルと区別するのに有効とされている文法項目の一つとして,関係代名詞の使用が挙げられている。
  本発表では,日本人中高生に特化した書き言葉コーパスであるJEFLLコーパス(Japanese EFL Learner Corpus)を使用し,CEFRレベル別にどのような関係代名詞の正用・誤用の分布が見られるかを探る。 さらに,A1-C1レベルの学習者の描写タスクにおける関係代名詞の回避傾向に関しても報告する。 これらのデータをもとに,関係代名詞について,どのような指導が必要であるかを考えたい。
「英語のライティング能力の発達を考える:効果的な指導・学習を見据えて」
工藤 洋路(玉川大学文学部 准教授)
  コーパスデータの解析技術が発達したことにより,学習者が産出した大量のデータの分析が可能になり,英語力が向上するとどんな語彙や文法事項が使用可能になるかが分かってきた。 また,CEFRやACTFL Proficiency Guidelinesなどは,学習者の習熟度が上がるにつれて,現実の言語使用場面において,外国語を用いてどのような行動が可能になっていくかの情報を提供してくれている。 同様に,外国語の習熟度を測定する様々なテストの評価ルーブルリックや評価基準などから,外国語に習熟していくことは,具体的に何が発達していくことなのかが見て取れる。 このように,現在は,外国語の能力の発達に関する様々な情報が存在するが,では,こうした情報をどのように活用すれば,より効果的な外国語の指導や学習が可能になるのだろうか。 本発表では,ライティング能力を例にとって,ライティング能力の発達に関する情報を概観しながら,特に,日本人英語学習者がその能力を発達させるための,指導や学習の在り方を考えていきたい。

 

スケジュール
13:30開会の辞
13:40-14:30「英語学習者の語彙発達:コーパスから見えてくること」内田 諭
14:30-14:40休憩
14:40-15:30「中高生を中心とする日本人英語学習者における関係代名詞の習熟度別使用傾向」高橋 有加
15:30-15:40休憩
15:40-16:30「英語のライティング能力の発達を考える:効果的な指導・学習を見据えて」工藤 洋路
16:30-17:10質疑応答,全体討論
17:10閉会の辞

 

<会場へのアクセス – Access>
 JR西条駅から広島大学行きのバスに乗車し,広大西口バス停で下車。
  広島大学東広島キャンパスへのアクセス:
  https://www.hiroshima-u.ac.jp/access/higashihiroshima